「羆嵐」読後感
吉村昭作、「羆嵐(くまあらし)」を読み終えました。
少しずつ読んではいたのですが、先日読み始めたら、寝る前になっても続きが気になり、一気に最後まで。
読後に感じたのは、一人のマタギの人間としての強さであり、開拓村の雪の冷たさ、羆(ひぐま)の体臭、銃口から上る硝煙の臭いも感じるような臨場感に満ちた空気で、それはこの小説が、実際の事件を詳細に調べて書かれたからに他なりません。
特に後半、見えない羆を恐れる男たちの萎縮ぶりはリアルですが・・・
村の男衆や警察が200人以上集結し、多数の銃や大鎌を以って羆を斃そうとするが、気配にすら怯え足がすくんでしまう。
いよいよ軍隊出動か全員土地放棄かというとき、「あの男しかいない」と、一人のマタギの名が挙がった。粗暴で酒癖は悪いが、誰よりも多く羆を仕留めてきた男である。彼は一晩雪山を歩いて村に現れ、一人で行動した。そして羆のうらをかいて近づき、至近距離からライフルを立て続けに2発発射し、心臓と額を撃ち抜いた。
しかし、その顔面は蒼白だった。これほどの男でも、羆に対峙する時は死を覚悟していたのだ・・・。
写真は猫ですが
小説は、凄惨な事件を元にしていますから、読後感は爽やかとかすっきりしたというのはありません。マタギの男にも、すさんだ生活をしている理由があります。しかし、真に強い男の格好良さを思い知らされます。小説としてその根底にあるのは、膨大な歴史資料を丹念に調べて書いた重みです。
他の作品では「零式戦闘機」「間宮林蔵」の他に、万年NAさんお勧めの「高熱隧道」、今となってはやりきれない「三陸海岸大津波」、『解体新書』翻訳に当たった前野良沢を描いた「冬の鷹」など、読みたいと思えるものがたくさんあります。
恥ずかしながら、こんないい作家がいるとは知りませんでした。久々に夢中になれそうです。
5年前、まだ0才のにゃんこ。
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コメント
おはようございます。
SevenFiftyです。
>5年前、まだ0才のにゃんこ
おお、可愛い!
わたしんちはここ何年も、よそんちで飼えなくなった成ネコを引き取っているので子猫は10年以上飼っていません。
やっぱ子猫は良いです、わたしも飼いたいなぁ。
投稿: SevenFifty | 2012年9月13日 (木) 08時30分
熊と、にゃんの対比がいいですね。
でも、どちらも侮れません(^^;)
投稿: おくさん | 2012年9月13日 (木) 18時54分
SevenFiftyさん、おばんです。
おお、成ネコを引き取って飼っているのですか、慣れるまで最初は大変そうです。
>やっぱ子猫は良いです、わたしも飼いたいなぁ
子猫は宇宙一かわいい生き物ですね! が、子猫でいるのはほんの1ヶ月もなくて、
あっ
という間に大きくなります。だから子猫はかわいいのかな(笑)。
今は6kgある巨猫です(爆)。 こねこ → きょねこ
投稿: いちご | 2012年9月13日 (木) 19時08分
おくさん、こんばんは。
対比がいいですね。
猫も侮れません。かわいさに魂を抜かれそうです(笑)。
投稿: いちご | 2012年9月13日 (木) 19時30分
間宮林蔵……9日に春日部の白スポさんと二人で霞ヶ浦東岸を走って来ました。
帰りに間宮林蔵の看板、つくばみらい市の小貝川沿いに記念館とお墓が有るんでしたよね、時間に余裕が有ったので寄れば良かったかな、でも暑かったんだよなぁ
週末には徘徊~ず面々は金沢の万年邸から能登ツーに出掛けます、いちごさん今からでも……って私は欠席ですけど(涙)
投稿: 黒麦街道 | 2012年9月13日 (木) 19時46分
黒麦街道さん、おばんです。
9日と言ったら・・・つい先日ですね。確かコメントのどこかに10時半道の駅たまつくり・・・とあって、そっと襲撃しようかと思っていましたが、二度寝していました(爆)。
間宮林蔵、茨城出身ですから、そのうち行こうと思います。
徘徊~ずの方々、能登というのは存じております(笑)。私はどなたとも面識がないし、CB500に乗ってたわけでもなく・・・(て関係ないですかね)。CB750Fに乗ってたぐらいで(汗)。
あのCB750FOUR、500FOUR、W、Z・・・圧巻だろうなぁ。一度見てみたい。走れたらなお幸せです。
投稿: いちご | 2012年9月13日 (木) 20時11分