「高熱隧道」を読み終えました
最近、にわかにファンになっている作家吉村昭の「高熱隧道」を読み終えました。
隧道(ずいどう)とは、すなわちトンネルのことですが、ダイナマイトと人力だけで、摂氏165℃にまで達した温泉地帯の岩盤を掘りぬいた、実話に基づく小説です。
驚くべきは、じわじわと不気味に上昇を続ける岩盤の温度だけではありません。
目もくらむような高さの岸壁に「コ」の字に穿った水平歩道や日電歩道を、150kgもの荷物を背負って歩いた強力(ごうりき)たち・・・
黒部には怪我がない、歩道から落ちることは死を意味する・・・
ダイナマイトが自然発火して重大事故が起きた・・・
泡(ほう)雪崩で木造5階建ての宿舎の3階から上が600メートルも宙を飛び、84名が亡くなった・・・・
最初から最後まで、読む側も驚きと緊張の連続でした。
このような先人の尊い命、努力、信念、智慧、不撓不屈の精神などが、この発電所のみならず、今の日本の基礎を作ったのだと思わされます。
何度か大事故が起き、そのたびに工事は中止されましたが、電力開発は国力の礎になるものだとされ、再開されました。
でも、最後は意外な終わり方でした。ネタバレになるので書きませんが、なるほど、極限状態で人はそうなるのだなと感じました。
この隧道は、今は一般の方も、一部を見学できるようです。
水平歩道や日電歩道も、今では壁にワイヤーも敷設され、上級トレッキングコースとして多くの登山者を迎え入れています。
一度、それらキーワードでWeb検索してみれば、絶壁を人力で掘りぬいた、最狭部では80センチしかない驚くべき道を見ることができます。眼下は100メートル以上ある垂直の断崖です。
初期の日電歩道 (Webから拝借しました)
さて次は、丹那トンネル掘削にまつわる「闇を裂く道」にとりかかりましょう。完成までに16年という年月を要したトンネルについての物語です。
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コメント
初期の日電歩道・・・私には、これは無理です。こんな所には立てません絶対に!!
最近 細かい文字が遠のくので読み物はチョットコツが必要になりました。
でも、今頃になって「小説」を読破する面白さを感じてました。
もっと早く 学生の柔軟な頭脳(あったと思うtぶん)で読んでいたら、今頃違う道を・・・ムリかぁ(* ̄Oノ ̄*)
投稿: かもしか | 2012年11月14日 (水) 21時58分
なにこの水平道路・・・スゲー!
ちょっと行ってみたくなったよ。
それまで登山上級者になれるようガンバロウ。
投稿: ヘボカル | 2012年11月14日 (水) 22時32分
隧道工事は、今でも大変だと思います。
二十年以上前に、私も経験しました。
ダイナマイトに事故・・・
こちらに帰って来てから当時の所長から「裁判で証言して欲しい」という連絡があったときの緊張を思い出します。
恐らく、現実は小説以上ではないかと。。。
小説は読んだことはありませんが。。。
投稿: utunosamu | 2012年11月15日 (木) 20時14分
かもしかさん、おばんです。
>初期の日電歩道・・・私には、これは無理です。こんな所には立てません絶対に!!
私も無理です、死ぬ気でも立てません。
↑で、ヘボカルさんが立ちたいと話しております。彼に期待しましょう(笑)。
>今頃違う道を・・
いやいや、先日直接聞いた職業は立派なものでしたよ。
今後はぜひ吉田秀和全集を全部!
投稿: いちご | 2012年11月16日 (金) 17時56分
ヘボカルさん、おばんです。
凄い道ですよね! 今では壁にワイヤーも打たれていますから、この頃よりは安心だそうです。
「水平歩道」で検索すれば、中高年がたくさん歩いているのも見られます。
私は、・・・絶対いやですが・・・(汗)。
投稿: いちご | 2012年11月16日 (金) 17時58分
utunosamuさん、おばんです。
何と!経験者でしたか。(≧∇≦)
>恐らく、現実は小説以上
そうに違いありません。高音、雪崩、爆発・・・小説では1行で終わってしまいますが、現実にはたくさんのことがありそうです。
投稿: いちご | 2012年11月16日 (金) 18時02分