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2014年2月 4日 (火)

大滝詠一の曲

大学時代のある夏休み、私は地元の市民プールで監視のバイトをしていた。

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そこに1才年下のSがいた。彼は東京のアパートに住む私大生で、夏休みだからと地元に帰省していた。バイトには私よりあとから来たが、全身綺麗に焼けた彼は、目を輝かせて言った。

「僕はウィンドサーフィンyachtやってるんです」
「ふうん」
「通学でも、電車内でも、真冬でも、ビーチサンダル履いてるんです」
「ふうん。でもなぜ?」
「サーファーだからです」
「つまりそれは、自分がサーファーであることのアイデンティティ証明というわけかい」
「そういうわけでもないけど、まあ、そんなところです。それに、海が好きなんです」
「ふうん」

彼の後ろにはプールがあり、真夏の太陽が水面に揺らいでいた。

(海なんて誰だって好きなんだよ。お前も胡散臭ぇな)と思った。
でもそういう私は、いつ洗ったか分からないような薄汚れたジーパンをはき、これまたよれよれのトレーナーを着て400ccのバイクに乗る、地方の国立大学生だった。だから、彼と私との垢抜けている度合いには、少しsign02違いがあった。ナナハンに乗り換える1年前のことである。

 

「サーフィン行くときには、いつもこれを聞いてます。いいアルバムですよ」
そう言ってSが教えてくれたのが、「A LONG VACATION」cdである。

8月末でバイトは終わり、秋になって友人からレコード(ちなみにこれは国内CDの第一号だそうだ)を借りて聞いてみたら、たちまち気に入ってしまった。カセットテープに録音して、冬になってもウォークマンで聞き続けた。

 

翌年夏、サークルの行事で、大勢で車rvcarcarrvcarcarに分乗して福島県で開催されるイベントへ行った。
私はCB750Fで、友人のスーパーホークⅢと炎天下の一般道を走った。磐梯吾妻スカイラインでアクセルを開けると、彼はたちまちバックミラーから消えた。

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後日、ある女子はその移動の様子を、サークルの文集へ書いた。
「大滝さんは歌いすぎてkaraoke、声が伸びてしまいました」
そう、当時の同年代の人の多くは、これを聞いていたのだ。
 

 

 

「A LONG VACATION」は、全曲とも、作詞:松本隆、作曲:大滝詠一の組み合わせである。
CDやDVD全盛の現代、A面・B面という概念はなくなってしまったが、私はそのB面をよく聴いた。「雨のウェンズデイ」や「SPEECH BALOON」など・・・ここには80年代、海辺に佇み、愛を語り、喜び、悲しみ、悩んだ若い男女の姿があった。

この雰囲気を継承した「EACH TIME」も発売された。竹内まりやの2枚と同様、私の愛聴盤cdである。
この2枚を聴いたことのない方には、是非お勧めする。80年代テイストたっぷりで、JPOPの原点がこの時代にあることが    クラシック音楽における古典派がバッハやモーツァルトであるように    たちどころに分かるはずである。

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でも大滝サンの曲で1曲選ぶとしたら、何だろう。「ペパーミント・ブルー」だろうか。

  斜め横の椅子を選ぶのは
  この角度からの君が とても綺麗だから

 

 

 

 

月日はめぐり、若者だった私はおっさんになったが、この曲を聴くたびに、頭の中を薄青色の風が吹き抜ける。でも大滝サンはいなくなってしまった。

 

なお、コメントを下さるある方も、地方国立大学の出身らしい。場所こそ違うが、同じ時代に同じように大学に通いバイクに乗り、30年近く経って、ブログというメディアで双方知ることとなった。

 

 袖触れ合うも多生の縁

 バイクに乗るも多生の縁。

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音楽にまつわる思い出話」カテゴリの記事

コメント

大滝さんの曲は、さらばシベリア鉄道が好きです。「君は近視、眼差しを読み取れない。」のフレーズが故郷の11月あたりの、どんよりとした雪空を連想させて、まだ見ぬ異国の冬景色もかくや、と独り合点していました。太田裕美のハイトーンボイスは、ハンカチやしあわせ未満の頃と変わりない事に少し安堵したりして家路を急いでいた晩秋の雪空が、狂おしく懐かしい屈折している元地方国立大生でした。

投稿: 猫の顔 | 2014年2月 4日 (火) 13時41分

こんにちは。

大滝さんの作品は多くの人の心に生きていますね。
わたしも「A LONG VACATION」で出合って、以降の作品、そして初期作品や関連作品へと耳を広げていきました。
松本隆さんの詩は初期の頃から、日本歌曲と同じような空気感と想像を喚起する情景描写が感じられて、たまらなく好きです。

投稿: 親父りゅう | 2014年2月 4日 (火) 16時35分

こんばんは。
ジャケットが常夏のプールというシーン、
良いですね。君は天然色のフレーズで
「くちびるつんと尖らせて~、何かたくらむ表情は~」
情景が浮かぶようで好きでした。
ピアノやエレキの音色も良かった。だいぶ聴いてましたよ。
ちなみに、カセットテープの入った段ボールを
ひっくり返したら、ありましたよ。まりやさんの
ヴァラエティ、およそ30年前の、いやびっくり(^^)
あ、失礼しました(^^;

投稿: 風まかせ | 2014年2月 4日 (火) 17時43分

こんばんは。
SevenFiftyです。

わたしが若造の頃もおっさんになった今でも知多半島の新舞子海岸ではウインドサーフィンが盛んでした。
時々見に行きました。
わたしもCB750Fでしたよ。
ツレはGL400です。
わたしがアクセルを開けると恐ろしい勢いで付いてきましたよ。
当然、コーナーではぶち抜かれます。(昔のエキスパートライセンス保持者・・・たぶん国際B相当)

投稿: SevenFifty | 2014年2月 4日 (火) 19時33分

こんばんは。
私も大滝詠一は大好きでした。
亡くなってしまいとても悲しく残念です。
ipodには沢山彼の曲が入ってます。
ナイアガラ、山下達郎、佐野元春、杉真理、伊藤銀次
彼の影響からいろいろなメンバーの曲を探して聞いたことを
思い出します。
バンドでも曲のコピー練習しました。(笑)
いろんな人にも曲の提供してましたよね!
中でも松田聖子が歌った「いちご畑でつかまえて」は
大滝さんが歌うととってもいい曲でした。

投稿: グランCB | 2014年2月 5日 (水) 22時04分

>猫の顔さん
コメントお待ちしておりました(笑)。
>「君は近視、眼差しを読み取れない。」のフレーズが故郷の11月あたりの、どんよりとした雪空を連想させて、まだ見ぬ異国の冬景色もかくや
てことは、出身は新潟か山形あたりでしょうか。
>太田裕美のハイトーンボイスは、ハンカチやしあわせ未満の頃と変わりない事に少し安堵したりして家路を急いでいた晩秋の雪空が、狂おしく懐かしい屈折している元地方国立大生でした。
やはり猫の顔さんも文章がお上手です。太田裕美もこれを歌っていたんですね。

>親父りゅうさん
ブログ、ちょっと拝見しました。
大滝さんの思い出がたくさんあって、世代が近い気がします。
>松本隆さんの詩は初期の頃から、日本歌曲と同じような空気感と想像を喚起する情景描写が感じられて
松田聖子にもたくさん詩を提供していました。80年代のJPOPというか歌謡曲は彼を抜きにして語れません。

>風まかせさn
>ピアノやエレキの音色も良かった。だいぶ聴いてましたよ。
伴奏も手を抜いていませんね。歌と一緒になって、ここには彼だけの世界があります。
>ひっくり返したら、ありましたよ。まりやさんの
>ヴァラエティ、およそ30年前の、いやびっくり(^^)
カセットでは今や再生に苦慮しますね。テープで聞くと、当時にタイムスリップできそうです。

>SevenFiftyさん
CB750FBでしたね。以前、画像お借りしました。
ナナハンクラスの車体にローパワーのGL400でそこまでやるとは凄いです。
やはり、腕が違うのですね。

>グランCBさん
グランさんも大滝さんが大好きでしたね。
「いちご畑でつかまえて」
聞いたことありませんが、森進一が歌った「冬のリビエラ」も、いかにも大滝さんの雰囲気たっぷりでした。

投稿: いちご | 2014年2月 5日 (水) 22時21分

大瀧詠一さんの声は,透明感がありどこかクールな部分と熱い部分がうまくミックスされた歌唱力・・・いいですよね。
あまり,たくさんの曲は知りませんが「幸せな結末」も好きですね。
若い頃,カラオケで歌ってましたね(^^ゞ

いつの時代もそうだと思いますが,「思い出は美化される・・・」よかったことも,つらかったことも・・・

あれ・・・何が言いたいんだ・・・俺?

投稿: koara | 2014年2月 6日 (木) 22時49分

>koaraさん
>どこかクールな部分と熱い部分がうまくミックスされた歌唱力・・・いいですよね。
おお! これは素晴らしい表現です。まさにその通りですね!

>「幸せな結末」も好きですね。
いいですね。「冬のリビエラ」も大滝さんらしい雰囲気があって好きなところです。

>「思い出は美化される・・・」よかったことも,つらかったことも・・・
>あれ・・・何が言いたいんだ・・・俺?
こんど、若かりし日のことをじっくりお聞きしますよ(笑)。

投稿: いちご | 2014年2月 7日 (金) 19時56分

大滝詠一の曲のベストは「恋するカレン」だった事をさっき思い出した!懐かしいなぁ!

投稿: 猫の顔 | 2014年2月12日 (水) 23時41分

>猫の顔さん
毎度です。
「恋するカレン」、大滝さんの代表曲の1つですね。アレンジ、声、描かれる光景・・・どれもが80年代です。HONDAで言えば、CB750FBの頃ですかね(笑)。
バオバオという排気音と共に・・・

この曲の歌詞には???という部分があるので、あとで書きます。

投稿: いちご | 2014年2月13日 (木) 23時11分

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