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2014年4月25日 (金)

「天上の青」読後感

曽野綾子著、「天上の青」を読み終えた。

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天上の青とは、英語で ”heavenly blue”、小説では青いアサガオを指している。小説そのものは昭和史に名を刻んだ大久保清の犯罪をモデルとしているが、それを事実のまま辿ったわけではなく、舞台も含めて全く違っている。
 
では、この小説で作者が言いたかったこととは何か。
それは、『人間とは不可解な存在である』ということだと思う。
 
 
 
全ての小説にはテーマがある。作者はそれを登場人物の言葉を通して世に訴え、主張するのであって、テーマのない小説は、単なる作文に過ぎない。
 
それは、三島文学であれば「愛とエロスと滅びの美学」であり、川端文学なら「日本の美しさと悲しさ」であり、また北杜夫の『楡家の人々』のように、「時間とは一体、何であろうか」と直接書かれていることもある。
しかし中には、テーマのかけらも感じられないものもあって、読後不快になる。
 
 
 
 
さて「天上の青」で、最も不可解なのは殺人鬼宇野富士男であるが、富士男が心を寄せる雪子も不可解な行動をとる。雪子は、富士男が裁判で死刑になることを確信しながらも、彼の弁護士費用を負担する。
当然、彼女の行動は周囲から理解されない。それでも雪子は、彼を想い手紙を書く。
「あなたを愛しています」と。
 
 
「人間とは不可解なもの」がこの小説の縦糸であれば、横糸は、雪子が富士男を想うキリスト教的愛であり、そこにクリスチャン曽野綾子の心がにじんでいる。
 
 
 
それにしても、青というのは何という色だろう。空の青、海の青。雄大でありながら、時に悲しみすら感じさせる。
この小説の主題は、「天上の緑」でも「天上の赤」でもなしえなかった。そこに作者の深い洞察力も感じるのである。

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文化・芸術」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。
SevenFiftyです。

天上の青
ひっくり返して文字をちょっと変えると、結構下世話な感じになりますね。
てんじょうのあお→あおてんじょう→青天井
青天井:物の価格や取引の相場の上限が天井知らずで上昇です。

甚だ下世話でありますが、わたしは天丼の上があれば1時間は至福です。

>それにしても、青というのは何という色だろう
URLは青のイメージで撮ってみました。

投稿: SevenFifty | 2014年4月25日 (金) 11時59分

SevenFiftyさん
駄記事にコメントをありがとうございます。
>青天井
そうですね、持っている株がそうなるといいんですが。
>天丼の上
うまい! (=上手い&美味い)
URL拝見しました。素晴らしい写真ですね。雑誌に出てくるような、CGのような。
雨で揺らいでいるところがまたいいです。

投稿: いちご | 2014年4月26日 (土) 16時59分

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