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2014年5月14日 (水)

「美味しんぼ」騒動を考える

今、漫画「美味しんぼ」の鼻血描写をめぐって、あちこちで喧々諤々である。
問題とされているのは、主人公が東京電力福島第一原発を訪問後、鼻血を出した描写である。作者は、綿密な取材に基づいたものだと言う。

この騒動を見て、私は太平洋戦争を思い出した。

私は戦後生まれなので、もちろん太平洋戦争のことは直に知らない。しかし、やはり漫画の「はだしのゲン」に、『この戦争で日本は負ける。早く戦争をやめろ』と叫んだゲンのオヤジが憲兵に捕まえられたという場面があった、そのことである。

頭上はるか上空を、編隊をなして飛ぶ巨大なB29を見て、遠からず日本は負けると感じていた国民は多かった。しかし、それを口にすることはタブーであった。一部の慧眼な大人や知識人は戦争の敗北を確信していたが、それを言うことはできなかった。

 

 

翻って、福島である。

「がんばろう」の名のもと、皆、復興に懸命である。米も魚介類も肉も、安全宣言が出されている。
そこにきて、この「美味しんぼ」の鼻血描写とは、何ごとだ! そう言うのは分かる。福島県が作者に抗議をしたのも、理解できる。

 

 

しかし。

福島の米も魚介類も肉も美味しいと言っても、本当に安全なのか?

 

そう書くと、「風評被害だ」と反論する方も多かろう。だが福島第一原発からまき散らされた放射性物質は、3年や4年では健康被害をもたらさないレベルのものだ。それがたちが悪い。食べ物の味だって、変わりはしない。第一、味が変わるほど放射能が強かったら、それを食べている間に人は死んでしまう。

 

しかも放射性物質は、なにもヨウ素やセシウムに限らない。半減期が24000年もかかるプルトニウムまで放出されている。これはマスコミは報道しない。

食べ物の味は変わらない、人間だって元気だ。しかし、10年、20年という長い年月をかけて、放射能は人の体を蝕んでいく。これが放射能の本当の怖ろしさである。

 

つまり作者が言いたかったこととは、「一億玉砕、欲しがりません勝つまでは」とプロパガンダを叫ぶことで、戦争の敗北を主張した人を排除したのと同じように、「皆復興のために頑張っているんだ、鼻血とはけしからん!」と、真実を叫ぶ人を排除し、完全な除染は無理だと皆薄々分かっているのに、「がんばろう」と一致団結することでその現実から目をそむけていないか? ということではないだろうか。

そして皆、本当に言いたいことを、我慢していないか?

 

 

「はだしのゲン」も、ちょっと前に、凄惨な描写があるという理由で、一時期、あちこちの図書館から排除された。でも、戦争の悲惨さを正面から見つめようではないかという結論に達し、漫画は戻されたはずである。
あの出来事から皆学んだこととは、凄惨な現実から目を背けてはいけないということではなかったか。

 

福島も、同様ではないか。

鼻血の描写は、除染進まぬ福島の大地の象徴と思う。そして震災、いや原発事故以前に比べ、途方もないほどの放射性物質が、福島とその周辺にまき散らされた。これは事実である。

 

「復興がんばろう」も大切なことだが、残念ながら、人の力ではどうにもならないほど、汚染レベルはひどいのだ。皆、その現実を直視しよう。そして原発事故が二度と起きないような社会を作っていこうではないか!

筆者の真意はこうではないかと、私は思うのである。

 

ついでに言うと、マスコミの報道もよくない。鼻血の部分だけ抜き出して、世論を煽っている気がする。見るべきは全体であって、鼻血ばかり騒いでネットて拡散させることこそ風評被害である。

同様の事例に、「不倫は文化だ」と言ったあの俳優の件がある。本当は彼は、「不倫から文化が生まれることもある」と言ったのである。それがマスコミよって短縮されてあの文になった。
両者を比べると、主旨が違うことは明白である。

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日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

はじめまして。
長らくブログを拝見させていただいて、初めてコメントさせていただきます。
僕がCB1300SFに乗っていて、ネットでいろいろ検索してここにたどり着いた。

漫画の(はだしのゲン)というのを読んだことはない、しかし、その逸話を始めて知った。(僕が教えられた戦争の歴史は、最後の最後、だれも敗戦を認めず軍人の切腹や沖縄の人々の海への飛び込み、天皇が玉音放送で戦争が終結し(日本側の解釈)満州からの撤退は日本軍国主義の壊滅の始まり(中国側の解釈)。
本当は、僕のような中国人にこのような内容を読ませてはならないかもしれません。
なぜなら、近頃、日本と中国がちょうど領土問題やデモがいろいろあって、厄介で避けるべきでしょう。

しかしながら、僕にとってこの記事に書かれた(一部の慧眼な大人や知識人は戦争の敗北を確信していた)という部分の(確信)という文字を読み、その逸話が真実だとわかった。

僕自身、18歳で来日してから、すでに日本で滞在した年月が中国で滞在した年月よりも長くなった。
僕自身が考える(信念)というものは、一人ひとりの人間がみな、個々として信念に支えられていて予測や選択や判断をしている。心と身。身は大自然、親のおかげだが、心は信念のおかげという(信じる心)が人間の根本だと考えています。
しかし、日本という環境では、こういう自信を持ってはならない信念であり、行き過ぎた信念でもあります。(少なくとも、口にしてはならない)
その理由はとっても簡単で、もし一人ひとりが自分自身の信念に目覚め、前向きに生きていくとなると、誰が皇帝の言うことを聞くのか?だれが天皇万歳を口にするのか?だれが統治階級にしたがうのか?
だから、世襲による統治階級にとって、この(信念)が禁断な領域であり、踏み込んではならない神の領域であり、神の代言者である皇帝にのみ属することで、ほかのすべては神に従うべく、という正当性の確立ですね。
こうして、信念はいつの時代にも歪められているもの(権力者にとって都合が悪い)、いまの中国もそうですし(共産政権の正当性の確立)、福島のこともそうでしょう。(一人ひとりの国民の努力よりはるか重要なのは、原発の推進の正当性、事故したものの回復しつつという国と地方の政策の正当性の確立)

ブログ主さんの記事を読んで僕はこう確信しました。
事故が起こさないようにこれから始まる社会を共に作っていくことは実現します。そして、必ずふたたび原発事故が起こる。ということです。
なぜなら、戦争というのは、他の国、他の民族、他の国民への支配にある。もちろん、資源への支配がその中心でしょう。そうした支配は、必ず敗れる。(この記事のおかげでいただいた確信です)
同じく、原子力への支配は、必ず敗れる。(人は人であり、原子力ではない)
もちろん、ブログ主さんが考える原発の汚染の現実から逃げず、直視することは同感しています。
おかげさまで、現実と真実の違いは、現実は信じてこそ実現する。真実は確信あるのみ。
こうして、福島は必ず事故からふたたび立ち上がると僕は信じています。かつての長崎、広島よりも遥かに早いと思います。(今の時代は何でも早い、、、のんびりしていられないぐらい)
長い文書といまだに堅苦しい日本語をお許しください。

投稿: 在日中国人S | 2014年5月15日 (木) 04時15分

私が思うに、一番大切なのはその場所に行ってみることだと思うんですよね。
除染が進んでいない事実も分かるでしょうし、かといって、数日その場所で生活をしただけで体に異変が出てくるような状態なのかも分かると思います。
放射能に汚染されたのも事実ですし、それを改善しようと必至になっている人たちが大勢いることも事実です。
その様々な思いを感じる意味でも、その場所に滞在してみる必要はあると思います。

投稿: utunosamu | 2014年5月15日 (木) 22時53分

我が国は唯一の被爆国なので、原発については、もっとモメていいと思います。

投稿: | 2014年5月16日 (金) 01時20分

こんにちは。
SevenFiftyです。

>あちこちで喧々諤々である
この言葉は使い方で話題になりますね。
誤用とするか新語とするかです。
(喧喧囂囂+侃侃諤諤)÷2=喧々諤々
すでに一般的なっているので、わたしは新語と考えます。

>「はだしのゲン」も、ちょっと前に、凄惨な描写があるという理由で
子供頃にリアルタイムで読んでいた世代なので過激な描写はワクワクしたのもですよ。
これは「はだしのゲン」より少し前に連載された「ハレンチ学園」の過激な描写にワクワクしたのと同じような感覚です。
当時の子供はそんなもんでした。

投稿: SevenFifty | 2014年5月16日 (金) 10時52分

こんにちは。

始めてのコメントです。


>「復興がんばろう」も大切なことだが、残念ながら、人の力ではどうにもならないほど、汚染レベルはひどいのだ。皆、その現実を直視しよう。そして原発事故が二度と起きないような社会を作っていこうではないか!
筆者の真意はこうではないかと、私は思うのである
>ついでに言うと、マスコミの報道もよくない。鼻血の部分だけ抜き出して、世論を煽っている気がする。見るべきは全体であって、鼻血ばかり騒いでネットて拡散させることこそ風評被害である。


全く同感です。
メディアの報道姿勢には情報操作しているような
違和感があります。

不都合な情報ももっと表に出ていいと思います。

投稿: たぬきおやじ | 2014年5月16日 (金) 18時00分

こんばんは。いちごさんのこちらの記事、
私の思っている内容そのものでしたから
驚きました。詳細な表現でありがとうございます。
より多くの方々が読んで頂きたいものです。
補足させて頂きますと、今回の件、大騒ぎした
ものの誰一人として表現が間違いであるとか、
嘘だとか言う方がいないと言うこと・・。
政治家や県知事のコメントは抗議のみであると
言うこと。じゃあ、真実はとは誰も問わない、言わない。
うやむやにして終わらせるようですが・・。
テレビで報道される場面は、みんな著者を非難して
いる被災者のみ・・。操作されているような・・。
今回は、今一度原発再稼働を再考する機会ですよね。

投稿: 風まかせ | 2014年5月16日 (金) 20時20分

こんばんは。
美味しんぼの話は「鼻血」だけが独り歩きして
話を難しくしてるようですが、私もいちごさんの言われる通り
だと思います。本題をすり替え風評被害を煽るようなマスコミの
報道。国や見識者の発言による追い打ちにより、さらに事実のわん曲
を行い、正しいことを正確に伝えようとしているものに対し、
悪だともとれるような報道。
国の都合の悪いことはすべて抑え込もうとする国力は
すごいものがありますね!
現実を直視し、事実を正確に伝えることが本来のマスコミの責務だと
思います。
現実を受け止め、理解したうえで今後どう対応し二度とこのような被害を
起こさぬよう、また人々の生活を守れるように考えることが大切なのではないでしょうか!?
その為にも真実を早く知り正確な判断を行い早く対応することが
早い復興につながるのでは!と思います。

投稿: グランCB | 2014年5月16日 (金) 21時50分

皆さん、コメントありがとうございます。
一部の方には反感かうことを覚悟で書いたのですが、思いがけず賛同していただきうれしいです。

>在日中国人Sさん
日中関係と天皇についてはデリケートな問題ですので、ここでは触れません。
今後ともよろしくお願いします。

>utunosamuさん
そうなんですよね。行きたいんですが、なかなか時間がとれず。

>名前のない方
そうですね。governabilityが高い=従順な国民性ですね(私も含め)。

>SevenFiftyさん
漢字は一瞬頭に浮かんだんですが、PC辞書が一発で変換したのでそのままに。
はだしのゲンは、リアルタイムで読みましたよ。
ハレンチ学園(永井豪)は、少年には刺激的でした。

>たぬきおやじさん
不都合な情報が出て、議論や行政の対策がされるのも、美味しんぼ作者の狙いではあるようです。
ブログちらっと拝見しました。ゴールドウィングF6Bですか。
あとでゆっくりお邪魔します。

>風まかせさん
きっかけは、風まかせさんのブログでした。
>テレビで報道される場面は、みんな著者を非難している被災者のみ
まずは番組作成者の意図ありきですね。
原発は昨年夏も現在全て止まっていますし、なくてもやっていけます。

>グランCBさん
>正しいことを正確に伝えようとしているものに対し、悪だともとれるような報道。
そうですよね。
糾弾されるべきは美味しんぼ作者ではなく、電力会社と行政です。

投稿: いちご | 2014年5月17日 (土) 08時32分

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