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2014年10月18日 (土)

ハーレーの女

実は、と言うほどではないが、ハーレーの女の子の話には続きがある。それを、時間を戻して書いてみる。

私は白バイ大会のトライアル競技を約1時間見て、帰りの駐車場に向かった。早く切り上げたのは、10月の太陽は午後3時ともなると、西空から黄色の混じった光線を放ち、茶色い大地の会場をなお一層埃っぽく感じさせていたし、1時間見れば、競技の概要は大体分かったからである。

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ここに来て、まだ誰とも会話していなかった。そのまま黙って駐車場に着くと、広いアスファルトには人影もなく、もう帰った人も多いためだろう、競技を見学に来たバイクは歯抜けのように並んでいた。私は帰りにどこへ寄っていこうかと考えた。
そんな何の変哲もない、初秋の1日で終わるはずだった・・・・・。

でもそうは終わらなかった。後ろから近づいてきた痩身の女性が、すぐ隣に並んだハーレーのソフテイルで止まって帰り仕度を始めた。20代後半ぐらいか。こんなに若くて細いのに、重そうなハーレーで帰るのだろうかと、私はジャケットを着ながら、視界の端に彼女をとらえながら思っていた。

 

広い空間にほぼ2人きりである。ここで黙っているのは、例えて言えば、マッキンレーやアイガー北壁に冬季単独登攀に来て、数日ぶりに人に会ったのに、言葉も交わさない状況に似ていた。
だから、ハーレーの東京某所のナンバーを見ながら、後ろ姿に話しかけた。
「これから、□◇まで?」

すると彼女は、振りかえって言った。
「うわぁ、同じジャケット!」

このとき初めて、彼女を正面から見たのである。
彼女はつけ睫毛をしていたが、化粧と言えるものはそれと口紅だけで、にもかかわらず、ワンポイントのような長い睫毛と白い肌のコントラストは、20代という輝かしい若さをオヤジに感じさせるには充分で、澄ませば整った顔だちなのに、微笑んだときの愛らしい笑顔は、今日初めて会ったとは思えない親しみやすさをもって私との距離を狭めた。
身長は160センチぐらい、イエコンのベージュ色のジャケット、グレーのライダーパンツ、黒いブーツで、しっかりした装備をしていることは一目で分かった。

私は予想外の言葉にたじろいだが、平静を装って答えた。
「そうですね。・・・それより、これから高速で東京まで?」
「はい、でも今は□◇でなくて、浅草なんです」
「そうですか。でも若い女性がハーレーに乗っているなんて、かっこいいですね」
「借りてきたバイクなんです。ちょっと前まで、スズキのGSF1200に乗ってたんですけど」

ヘルメットがフルフェイスなのはそういうわけか、と私は思った。
もう、こんな細身で、若くて、可愛い女の子が、大型二輪の免許を取れる時代になったのだ。私は、はるか昔、屈強であきらめの悪い男しか大型免許を取れなかった、あの暗い時代を思い出し、かなりの年月が経ったことを改めて感じた。

 

「白バイ大会、去年も来たんですよ」
彼女は、フルートのような声で話した。爽やかな秋風のようだ、と私は思った。

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「私も毎年来ているんだ。同じだね」
「白バイ、カッコいいですよね。だからCB見ると、いいなぁと思っちゃうんです」
彼女は私のSBを見て言った。(乗っている人もね)と言いたかったが、あまりに馬鹿げた言葉なので、やめた。
「それに、駐車場見ているだけで、いろんなバイクを見られて楽しくなっちゃいます」
彼女は目を細めて、再びあちこちを見渡した。本当にバイクが好きなようだった。若い人が、それも女性がバイクに乗ることを、私は素直にうれしいと思った。

私も荷物を詰めた。と言ってもカメラだけなのだが、帰るのはまだ早いような気がして、ぼんやりしていた。すると彼女はハーレーにまたがり、ヘルメットのシールドを上げて振り返って言った。
「それでは、失礼します」
「うん、ご苦労さま」
予想外の言葉ではなかったが、咄嗟に出た言葉がそれだった。なんと垢抜けなくて、気がきかない言葉だろう。でも言ってしまったものは仕方がなかった。
彼女はエンジンをかけ、Vツインの音を響かせ、細い後ろ姿を見せて走り去った。

 

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5分ほどして、私は会場を出た。正門から右折して3,4キロ東に走ると海岸に出る。その手前で右折して南に進み、太平洋を左に見ながら海岸線を走った。空気は秋の午後らしい冷たさを帯びて肌にまとわりついてきた。
この白バイ大会に初めて来たのは、SBを買ってからだった。そのあとオフ会にして、たくさんのブロ友さんと一緒に見て、帰りにはスタバに寄った。いい思い出がある。今年は1人だったがトライアルも楽しめた。そんなことを考えながら1キロぐらい走ったところで、前方に赤信号が見えた。バイクが1台止まっていたが それは、さっきの彼女であった。

私は隣に並んで言った。
「また会えたね」

(続く・・・)

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