« ハーレーの女 | トップページ | 散々だった日光ツー »

2014年10月19日 (日)

続・ハーレーの女

彼女もシールドを上げたが、その目は、可笑しくてたまらないという色に染まっていた。
「どこまで?」
「大洗なんです」
「おお、同じだね。じゃあ一緒に行きましょう」
「はい」

Img_0701

そこからは私が先導したが、ミラーで写る彼女は、SUZUKIの1200ccに乗っていただけのことはある。姿勢はしなやかで無駄がない。何より安定していて、見ていて不安を感じない。

途中の渋滞で話しかけてみた。
「タンクが小さいね」
「ええ、7リットルしか入らないんです」
「じゃあ、100キロぐらいで給油しないといけないわけだ」
「そうなんです。でも重心が低くて両足が着くから、安心です。4気筒だとスピード出しすぎてしまうし」
「なるほど」

案外、飛ばし屋さんなのかもしれない。

 

さて、大洗での出来事は、先に書いた記事の通りである。だが、同じ「YELLOW CORN」と書かれたジャケットを着た2人は、変な組み合わせに見えたことだろう。時刻は17時近くだった。私は帰りを急いだほうがいいと思って、高速の入り口まで案内しようと提案した。

「インターは、さっき聞いたご自宅方面なんですか?」
「そう、私の家もそっちなんだ」
実は違うのだが、まあ地元民だから勝手知った道である。

もう、「かあちゃんの店」は開いていなかった。この時刻、観光客はまばらで、海産物を焼く煙の向こうで、赤ら顔のオヤジが爪楊枝でササエのつぼ焼きをつつき、その隣では親子連れが海鮮丼を食べていた。黄昏の空気は一層重く、肌にまとわりついた。
ヘルメットを両手に持ち、彼女は言った。
「来年も会えるといいですね」
それは絵に描いたような社交辞令だったので、私は「そうですね」とだけ答えてヘルメットをかぶった。それに、電話番号やらメアドを尋ねる気もなかった。

Dscf0379

 

「じゃあ、お願いします」
「はい、行きましょう」
しばらく走って、インター手前の赤信号で止まった。彼女は右、私は左。古い歌にこんな歌詞があったが、彼女はシールドを開けて言った。
「気をつけて帰ってくださいね」
「はい、高速は、お気をつけて」

青になった。彼女は再び会釈をして、右折して料金所へ向かっていった。一度見えなくなったが、上りの右コーナーで再び姿を現し、こっちを見て白い手袋の左手を振ってきた。私も手を振った。

 

私は音楽をかけながら、国道6号線を南に向かった。彼女にブログのことは言わなかったから、ここを見る可能性は天文学的に低い確率に違いないし、もう会うことはないだろう。台風が近づいているらしかった。3連休のなか日、渋滞する国道から、あかね色の夕焼けが見えた。

Img_0858

 

もう、テールライトの洪水の中、首都高に入った頃だろうか。 私は赤く「YELLOW CORN」と書かれた細い背中を思い出した。
閉店して暗いままのガソリンスタンドの信号で止まると、SBのメーターは青く光り出していた。

                        - fin -

この話は嘘か真か?

|

« ハーレーの女 | トップページ | 散々だった日光ツー »

バイク」カテゴリの記事

コメント

この様な文章は中々書けないな・・・さすが いちごさん

ついつい「ハーレーの女」「続・ハーレーの女」と読みふけっていたら

w( ▼o▼ )w
この話は嘘か真か?

え? ( ̄▽ ̄;)!!ガーン

投稿: かもしか | 2014年10月19日 (日) 21時16分

「また会えたね」以降は妄想と見た!
でも、続編期待してます。

投稿: boonrich | 2014年10月19日 (日) 21時54分

こんにちは。
SevenFiftyです。

わたしが若造の頃、バイクに乗る女性は皆無に等しかった。
せいぜい原付1種です。
今では免許制度もかわり、初バイク = ハーレー も珍しくも無い。
ただいちごさんが描くような女性は皆無に等しいかもです。

30数年前、はじめて大型バイクに乗っている女性を見た。
バイクはZ650F、小柄な体格には丁度だとか。
女性はバイク屋でバイトしておりました、整備も手伝い時折近所の広い駐車場で整備後のバイクの試運転をしていました。
小型のバイクは鮮やかなクイックターンを披露してくれました。
お酒も強くバイク屋の常連(男ども)からは「女、捨てたなぁ」なんて言われていましたよ。(でも結構憧れている)

>この話は嘘か真か?
閉店しているGSの前でガス欠寸前でアタフタ状態の準号の横を、風のように駆け抜けるハーレー号のお話なら「真」だと思います。
次回はハーレーの女VS準号のおじさんと言う話・・・ぶっちぎられてよしで完結しそうだ。

そろそろいちごさんちニャンコの写真がみたいですよ。
URLは屋外のネコベッドの写真です。

投稿: SevenFifty | 2014年10月20日 (月) 13時09分

>かもしかさん
どうなんでしょうねぇぇぇ・

>boonrichさん
鋭い!

>SevenFiftyさん
確かに、ウン十年前、バイクに乗る女性は皆無か、稀有な存在でした。
琵琶湖で会った250ccの女の子がせいぜいです。

>初バイク = ハーレー も珍しくも無い。
確かにそうですね。

>Z650F、小柄な体格には丁度だとか。
いいバイクでした。ザッパーとかナナハンキラーと呼ばれていましたね。後のZ750FX2や3もこのエンジンだったかと。
にゃんこは、そのうちUPします。
URLの写真、一瞬死んでいるかと思いました(失礼)。わが猫も、たまにこんな顔して寝てます。

投稿: いちご | 2014年10月20日 (月) 23時18分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ハーレーの女 | トップページ | 散々だった日光ツー »