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2015年3月31日 (火)

真弓とW3

明け方に寝て、午後に目覚めたら青空だった。二日酔いなのではない、夜が明けるまで考え事をしていただけである。

俺は起きるとすぐに、真弓を空港で見送るため、Wをキックで目覚めさせて走り出した。
よく晴れていたが、天気予報では「午後から寒冷前線が通過するでしょう」と言っていた。夕方には雨が降るかもしれないが、俺には、真弓の顔を一目見ることのほうが大切なことだった。

W

井上陽水に「傘がない」という歌がある。都会の孤独より政治状況より、雨の中君に会いに行くための傘がない、そのほうが重大問題だ、そんな歌だが、今の状況がまさにそれだった。夕方には降り出すだろう。カッパがないことを考えると、青空が悲しく見えてきた。

空港に着くと、真弓は白いコートを着て俺を待っていた。モノトーンのコンクリートの中で、彼女の口紅の色だけが鮮やかだった。

「じゃあ、元気で」と言うと、
「あなたのことは嫌いじゃないけど、好きでもなかったわ。その古いバイクに乗る姿が素敵だっただけ」
真弓はそう言い、くるりと踵を返し、冷たい靴音を立てて搭乗口に消えていった。一度も振り向かなかった。

俺は、細い後ろ姿を見ながら思った。
「そうか、でも俺は君の全てを愛していた」

帰り道の途中、雨が降り始めた。
信号で止まると、エキパイに当たる雨粒が蒸発して、夜目に白く湯気になって立ちのぼった。吐く息と排気は白く、冷たい雨は体と心に沁み入った。雨滴は斜め後ろに流れ、ただ排気音と雨粒がシールドを叩く音が聞こえていた。

 

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これは、このブログの読者であるSevenFiftyさんから前々記事にコメントをいただき、そこに「ショートショートストーリーを」という記述があったので、フィクションとしてresしたものに少々書き足して再掲したものです。
写真はSevenFiftyさんが撮影されたものです(無断使用ご容赦を)。

なお「真弓」は、単に思いついた名前です。

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コメント

私は特に阪神ファンではありませんが、
野球選手を思い出しました。

投稿: 片田舎動物病院 | 2015年4月 1日 (水) 09時40分

こんにちは。
SevenFiftyです。

わたしのバイクとソロツーリング・夜・雨のエピソードからよくぞここまで話が膨らむものだと感心します。
想像力と文才の違いだと痛感します。

>写真はSevenFiftyさんが撮影されたものです(無断使用ご容赦を)。
それは全然問題ありませんよ。
基本的には転載自由です。
それからわたしのブログのURLをご存じないのでしょうか。
「650RS-W3ツーリングに行きたい」です。
尚、W3の本格的な登場は本年1月5日からです。
URLをごらんください。
650RS-W3の美しさを見てくださいね。

投稿: SevenFifty | 2015年4月 1日 (水) 12時52分

むかしの 名前で 出ています(笑)

「なお「真弓」は、単に思いついた名前です。」・・・

はーて?? 読者の中で何人が信じるのだろうか?

あ!もちろん 私は信じますよ 信じますとも(笑)

投稿: かもしか | 2015年4月 1日 (水) 21時58分

>片田舎動物病院さん
そんな選手もいましたね。

>SevenFiftyさん
文を書いたのは10分ぐらいですが、構想は2日間ぐらいで時々思い出しながら、です。
>それからわたしのブログのURLをご存じないのでしょうか。
ご存知ないです(笑)。今までURLも教えてもらっていないし、コメントもしていませんよ。
ちょっと拝見しましたが、「写真!」という素敵なものばかりですね。今度、富山湾でまねしてみます。
あとでゆっくり拝見します。

>かもしかさん
いや、本当に思いつきです。
中学の同級生にはいましたけど(笑)。

投稿: いちご | 2015年4月 2日 (木) 00時00分

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