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2020年12月30日 (水)

小説「ゼロの焦点」に描かれた北陸

連休で時間があるのでマメな更新です。

松本清張の小説はいくつも映画やテレビドラマになっていて有名ですが、そのひとつ「ゼロの焦点」を読んでみました。読んだ理由は、この小説の舞台が北陸であることで、私が北陸にいるのもいよいよ先が見えてきて、今のうちに読んでおくとよさそうだと興味が沸いたためです。

 

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ところで松本清張氏、Wikiによると出身は広島県ですが、北陸が出てくる小説は他にもあって、「けものみち」のヒロイン民子の出身は富山県高岡市伏木(ふしき)です。

しかしいろいろな小説や映画で、北陸という地は、《暗く、憂鬱な土地、犯罪者が逃げ隠れる地の果て》というイメージで語られることが多いようです。平家の落人伝説も多くありますし、15年間逃亡して時効寸前で逮捕された福田某も、一時期は石川県の和菓子屋におり、逮捕は福井県でされました。

「ゼロの焦点」に描かれた北陸も、やはりそのようなイメージで描かれています。

    ※テレビの健康食品のCMではありませんが、個人の感想です。また文章を切り取ったことで、意味が変化している可能性があります。

 

「金沢って、いいところでございましょうね」
「いや、つまらんところです。年じゅう、暗いような感じがして重苦しい所です」

 

新婚旅行を北陸にしたかったという主役の女性に対して、八ヶ岳あたりを走る電車の中で夫が
「向う(北陸)は、これほどきれいではないよ」
「君は都会に育ったから、北陸という暗鬱な幻想にあこがれているんだね」

 

雲は、諏訪湖より遙かに広い面積とくろずんだ色で湖面を圧していた。その雲ののびた端に北陸があるのだ。光を失った雲の色が、暗鬱な北の国を象徴していた。十里か二十里か知らないが、その先に低い屋根の町と、平野と、荒波の沸いている海がある。

 

鈍重な雲の裂け目から陽が洩れ、その光の下に金沢の町がひろがっていた。

 

北陸の暗鬱な雲とくろい海とは、前から持っていた彼女の憧憬であった。

 

(東京で)車の窓から見ると、春めいた暖かい陽が外苑の草の上に降りそそいでいた。金沢の暗い雪とはまるで違った世界の色である。

 

陽はいよいよ沈み、蒼茫とした景色があたりを閉じこめかけた。海の色はくろずみ、白波だけが沖で牙をむいていた。

 

 

などなど・・・・・・

確かに冬の北陸は暗いと思いますが、ここに描かれているほどだとは思いません。毎日雪が降り続くとたしかに暗くはなりますが。

 

 

なお、「ゼロの焦点」のクライマックスシーンは「ヤセの断崖」だと思われていますが、小説には「ヤセの断崖」とは一言も出てきません

2007年の能登地震で先端が落ちたヤセの断崖現地。この写真を撮ったのは2016年。

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そこから北を望む

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『牛山という海岸の断崖』  『福浦漁港から南へ行ったところの断崖』  『能登金剛』  『高浜』とあるだけです。おそらく映画のロケーションでヤセの断崖が最適と判断され、以降、そのイメージが定着したのでしょう。

 

高浜あたりの海

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福浦灯台へ行く小径

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福浦灯台の合成写真を作ってみた。寒々とした感じがいいね。

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また(ネタバレになりますが)小説の最後で、犯人は断崖から身を投げるわけではなく、追及を逃れるために舟を借りて沖に漕ぎ出しているのみです。こうしたすり替わりも映画の影響なのでしょう。小説にはかつてあった高浜駅や輪島までの鉄道、羽咋、七尾、高岡なども登場し、親近感がわきました。

 

小説と実際の地理は違いますし、小説と映画もまた違う・・・ということを再認識しました。

 

 

29日も走ったので、これがラストのラストラン。

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コメント

なるほど 私も定説通り ヤセの断崖がクライマックスシーンの舞台と思ってました
「福浦港より南」ですか
思い当たる場所は有ります
今の現役の福浦灯台&腰巻地蔵のある海岸部分で灯台の直下は落ちたらヤバいレベルの結構な断崖
「舟を借りて沖に漕ぎ出している」
のなら 灯台から左側が斜面となり 海岸へ下りられる
磯の海岸はボートなら置ける程度の場所はあります
・・・ちなみに私のブログでも過去に紹介
https://mannenna.hatenablog.com/entry/35529689
ほとんど観光客が来ない場所

投稿: 万年NA | 2020年12月30日 (水) 23時04分

>万年NAさん
大変ありがたい情報をありがとうございます。
福浦から南に実際にあるのですか。
まるきりフィクションというわけでもなさそうですね。
春にでも行ってみようと思います。

投稿: いちご | 2020年12月31日 (木) 10時33分

本は読んでいませんが、
「ヤセの断崖」何回か行きました。
またゆっくり行ってみたいです。

来年もよろしくお願いします。

投稿: 片田舎動物病院 | 2020年12月31日 (木) 22時52分

>片田舎動物病院さん
小説を読んでから行くと、また違って見えるかもしれません。

投稿: いちご | 2021年1月 1日 (金) 17時23分

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