文化・芸術

2021年10月 9日 (土)

東山魁夷【唐招提寺御影堂障壁画展】を見てきました

もう行ってから1週間が経ってしまいましたが・・・

東山魁夷(ひがしやまかいい)は、日本を代表する日本画家です(変な言い方だな)。その作品には独特の静けさがあり、2017年には画伯が描いた【緑響く】の舞台となった御射鹿池にも行ってきました(この記事)。どの作品を見ても、緑や青を基調とした落ち着いた色合いがあり、静謐なさが漂う気がいたします。

このたび富山県美術館にて、画伯が唐招提寺に奉納した【波濤】を中心に展示されると聞いて、行ってきました。

美術館HPから要旨を抜粋すると、

【波濤】は、鑑真和上が数々の名作を残した画伯が、10年もの歳月を費やして完成させた記念碑的大作で、奈良・唐招提寺御影堂の障壁画です。御影堂は唐招提寺を創建した唐の高僧・鑑真和上の尊像を安置するため昭和39(1964)年に建立されました。
その障壁画と尊像を納める厨子の制作を受託した東山は、日本の自然と鑑真和上の故郷である中国の風景を、5室の障壁画、全68面に描きました。

 

この日も10月なのに暑い日でした。

 

美術館外観

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2020年12月30日 (水)

小説「ゼロの焦点」に描かれた北陸

連休で時間があるのでマメな更新です。

松本清張の小説はいくつも映画やテレビドラマになっていて有名ですが、そのひとつ「ゼロの焦点」を読んでみました。読んだ理由は、この小説の舞台が北陸であることで、私が北陸にいるのもいよいよ先が見えてきて、今のうちに読んでおくとよさそうだと興味が沸いたためです。

 

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ところで松本清張氏、Wikiによると出身は広島県ですが、北陸が出てくる小説は他にもあって、「けものみち」のヒロイン民子の出身は富山県高岡市伏木(ふしき)です。

しかしいろいろな小説や映画で、北陸という地は、《暗く、憂鬱な土地、犯罪者が逃げ隠れる地の果て》というイメージで語られることが多いようです。平家の落人伝説も多くありますし、15年間逃亡して時効寸前で逮捕された福田某も、一時期は石川県の和菓子屋におり、逮捕は福井県でされました。

「ゼロの焦点」に描かれた北陸も、やはりそのようなイメージで描かれています。

    ※テレビの健康食品のCMではありませんが、個人の感想です。また文章を切り取ったことで、意味が変化している可能性があります。

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2020年7月31日 (金)

最近買った本とCD

富山地方は今日梅雨が明けたようですが、今まで雨ばかりでバイクに乗っていないので、ネタがありません。そこで最近買った本などを。

 

まずは、吉村昭著「間宮林蔵」。日本人としてただ一人世界地図に名前を残す(間宮海峡)偉人の話。

何と彼は茨城県出身なのでした。帰ったら間宮林蔵記念館に行ってみましょう。いつもながら、吉村氏の筆は余計な修飾をそいだ文で、かえって臨場感があります。

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2020年3月13日 (金)

野麦峠が止まらない

とタイトルを書いてみたものの、「峠が止まらない」などという変な日本語はないのであって、要は、野麦峠と野麦街道への熱が止まらないのだ。

小説「あゝ野麦峠」で描かれているのは、遠く飛騨や高山から野麦峠を越え、諏訪湖から岡谷一帯に糸引きに出た工女の物語である。内容に惹かれるのは、その悲劇性にもあるのだが、それがここ富山から日帰りで行ける場所にあるためである。

『こんな凄い話、一度自分の目で確かめてみようではないか。一度走ってみようではないか』と思うのだ。

 

ちらりと読んで分かったのは、工女たちが諏訪から飛騨地方へ歩いた「野麦街道」の一部は、今まで私が松本の帰り道に何度も通った国道158号線だったことである。松本から富山へ帰るときには、北へ向かって「重畳たる信飛国境の山々(小説の引用)」が見える。確かに、遙か前方には国境の山々が見え、たとえバイクであっても、そこを駆け上っていくことには一種の緊張を強いられる。

しかし、まさかあの急峻な山道を、しかも雪や吹雪の真冬に徒歩で帰ったとは・・・。梓川沿いには断崖絶壁の場所もある。

 

 

現時点で調べたところでは、諏訪湖の天竜川始点をスタートとして、政井みねさん(小説の主役の一人)のお墓がある飛騨市までのルートは、次のとおり。

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2020年3月 1日 (日)

野麦峠に行きたい!

とタイトルに書いたが、野麦峠には2回行っている。1回目は2016年9月3日。2回目は2018年7月30日

なぜまた行きたくなったのかというと、この動画を見て、たちまち野麦峠の歴史と、工女たちに強く惹かれたからだ。

 

ラジオドラマ「あゝ野麦峠」

このドラマは、小説に忠実に作られている。後半には制作者の解説もあるので、気になる方は是非ご視聴を。

特に、42:26部分、サイレンが鳴って「終わったよ、終わったよ、終わったんだよ~!」と叫ぶ場面が圧巻である。これは、年末に生糸工場のラインが止まり、いよいよ故郷に帰れるというとき、工女たちが喜びに満ちた歓声をあげる場面。彼女たちの顔が浮かぶようである。もちろん帰路には苛烈を極める峠越えがある。命がけである。しかし、それを差し引いてもなお、1年間、生糸工場で稼いだお金を持って故郷に帰れるという喜び。声優か女優か分からないが、この部分では、そうした感情が、実によく出ていると思うのだ。

ドラマでは、「その晩のうちに塩尻峠に向かったもんでっせ」と老婆が語る。諏訪から飛騨までは幾つもの峠を越える。野麦峠は、その途中の一部、そして最難所であったのだ。

冒頭など、男性と老婆の声がナレーションで入るが、これは小説の一部分である。

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2020年2月 4日 (火)

オーバードホールで佐渡裕さん指揮「皇帝」「英雄」を聴いてきました

2月2日(日)は、富山市にあるオーバードホールでベートーヴェンを聴いてきました。
指揮は、テレビでもおなじみの佐渡裕さん、オーケストラは「兵庫芸術文化センター管弦楽団」、ピアニストはエフゲニ・ボシャノフさん。演目は、《コリオラン序曲》、《ピアノ協奏曲第5番「皇帝」》、《交響曲第3番「英雄」》です。

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13時開場14時開演ですから、13時ちょっと前に近くの駐車場に車を停めて歩き出しました。このホール、電車で来るには駅前でいいのですが、車で来ると駐車場がなくて苦労します。事前に調べておいた安いところはどこも満車だし。

 

座席はかきさんに手配いただきました。かきさん、ありがとうございます。

《コリオラン》から始まって、「皇帝」のボシャノフさんのピアノ、時々テンポが変化しましたが、スタインウェイピアノの音色がとても綺麗に感じられました。アンコールの曲名は分からず。
ついで英雄(エロイカ)交響曲。ベートーヴェンが芸術家として飛躍的発展を遂げた曲で、目の前で英雄私にとっては初の「ナマ」英雄。とても楽しめました。

そして、佐渡さんがアンコールに応えて振りはじめたのは、何とベートーヴェンの第7交響曲の第4楽章。そのため、昨日から今日にかけてこの第4楽章の、それも後半の、それもコントラバスが延々と鳴る部分が、頭の中で鳴り響いておりました。

 

 

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2019年10月10日 (木)

あの作家のファンはいい加減諦めたらどうか

ノーベル賞の数々が発表されました。素晴らしいことです。

創設者のアルフレッド・ノーベルはもちろん、受賞された方々は皆、輝かしい功績を残しています。圧倒的な知性、果敢に挑戦する強靱な意志。受賞者の話を聞くほどに、その生き方には感銘を受けます。

しかし、毎年ノーベル賞が発表されるたび、不思議な方々をテレビで見て、奇妙な感じを受けます。こうも何年にもわたって期待して集まって、落選して、それでも彼の受賞を信じる理由は何か? なぜ集まって酒を飲みながら発表を待っているのか? それ自体が目的となっていないか? どうもこの方々の行動を見るたび、奇妙な感じはやがて嫌な気持ちに変化するのです。きっとそこには、
「こうして毎年集まっていることが、選考メンバーの目に留まるかもしれない。しかも受賞すれば、期待して集った飲み会が、そのままお祝いになるではないか」
という、ロビー活動にも似た、一種のいやらしさと、空虚で独りよがりな期待感が感じられるからでしょう。

まぁ、何を目的に酒飲んでもいいんですけどね。

 

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2019年6月 3日 (月)

クラシックコンサートに行ってきました

昨日6月1日は、富山に来てから3回目、約3年ぶりのコンサートに行ってきました(以前に行ったのは、①富山シティフィルによるベルリオーズ幻想交響曲ほか、②黒部で行われたショパンピアノリサイタル)。

今回のオケは、【富山大学医科薬科管弦楽団】です。

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当日券で600円という破格の安さ‼️ しかし、アマチュアオーケストラといえど演奏は侮れません。中でも、田島睦子さんがピアノを弾いたラフマニノフの2番は素晴らしいものでした。実は、初めて目の前で聴くラフ2。
この曲は、「のだめカンタービレ」をはじめとしたTVドラマや映画、女子フィギュアBGMなどでよく使われています。25年前に聞いた水戸駅ビルのエンディングテーマもこれでした。

がこの曲は、どんなに使われても、少しも安っぽくならない、手垢がつかない、音楽としての芯の強さ、気品があるような気がいたします。

 

反対に、「手垢のついた曲」というのがあるのです。「新○界交響曲」がそれでしょう。頻繁に演奏され、あまりにも有名になりすぎたため、ひどく安っぽく聞こえます。高名な音楽評論家の先生も、同じことを言っておられます。

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2016年12月17日 (土)

欲しかった「全集」

ずっと前から欲しいと思っていた、地方の書店でも古書店でも一度も見たことのなかった「吉田秀和全集」、このたび13巻まで購入しました。

と言っても、全集は第26巻ぐらいまでありますから、半分に過ぎません。2回に分けて買いましたが、2回目はバラ売りしてくれなかったので、1巻と12巻が重複してしまいました。まぁいいでしょ。
初版は確か1975(昭和50)年ですから、白かった函は40年の歳月を経てかなり熟成されています。
 
 
 

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2014年11月30日 (日)

小説「漂流」読後感

まずは、鼻血に関して、何人かの方からメールその他いただきました。この場を借りて御礼申し上げます。

 

さて、吉村昭の小説「漂流」を読み終えました。とてもいい小説でした。

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あらすじは、こんな感じです。

時は江戸時代。米その他の積荷と共に出航した小型の木造船は、不運にも時化に遭って船のかなりの部分を破壊され、絶海の火山島に漂着する。水も湧かない、穀物も育たない、木もろくに生えていない無人島で、主人公の長平は、仲間が次々と倒れたなか、ただ一人生還する。その12年に及ぶ生存の秘密と、想像を絶した生きざまは・・・?

 

この小説のテーマは、2つあると思います。全ての小説にはテーマがあります。それがないのは、単なる作文に過ぎません。 

1つ目は、長平に続いて無人島に漂着した船乗りが嘆く様子を見て、長平が感じた様子にあります。

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