サエコからの電話
今日も、二日酔いで寝ていた。
昨夜はだいぶ飲んだ気がする。一次会ではビールと日本酒を飲み、二次会では焼酎の水割りとビール、それにウイスキーも飲んだ。古い歌をカラオケで歌ったのも、女の子と話したのも覚えている。それから2kmの夜道を一人歩いてきた。服を脱ぎ、くたびれた雑巾のように布団の隙間に身を滑らせ、泥水のように寝た。しかし、あれほど楽しい時間を過ごして幸せな気分で床についたのに、この朝の気分の悪さはどうだろう。まるで、昨夜飲んだ酒が、寝ている間にことごとく鉛に変化して、澱(おり)のように身体の下側にたまっているようだ。頭は痛く重く、動くと眩暈がする。でも、寝返りをしないと体重で身体の片側が痛くなってしまうので、朦朧とした意識で向きを変える。
喉が痛い。息が酒臭いのが分かる。寝る前に、蓋つきの水を枕元に用意しておいたのは、そのままになっている。飲むために起き上がるのも苦痛である。
何時間前か分からないが、子供が部活のために出て行ったようだ。それを玄関まで見送り、「気をつけてね」というかみさんの声も聞こえていた。でも起き上がれない。もう酒を飲むのはやめようか、少なくとも今日は飲まずにおこう・・・・・・。
朝、一度目が覚めたときにつけたテレビも、そのままついている。みのもんたの朝ズバも、とっくに終わってしまったらしい。
身体の上下も分からぬほどに、朝、酩酊しているとき、携帯が鳴った。見慣れぬ、長ったらしい番号だった。
「はい・・・」
「いちごさん? お久しぶり」
「・・・」
「わたしよ、サエコです」
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